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東京高等裁判所 昭和24年(ネ)825号 判決

控訴人 原告 小滝安佐衛門

被控訴人 被告 栃木県知事 小平重吉

訴訟代理人 粟国永二郎 外三名

主文

本件控訴はこれを棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、原判決を取消す、被控訴人は控訴人に対し被控訴人が別紙目録の土地につき昭和二十四年三月二日附を以て為した買収処分はこれを取消す、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴人において、自作農特別措置法第三条及第十五条を自作農特別措置法第三条と、買収令書謄本を買収令書原本と、被控訴人において直接原告に手交したとあるを、控訴人の妻に手交し其の旨控訴人に告げたと訂正した外、原判決事実摘示と同一であるから茲にこれを引用する。

立証として、控訴人は、甲第一号証の一、二を提出し、乙号証の成立を認め、被控訴人は、乙第一号証を提出し、原審証人室井多門の証言を援用し、甲号諸証の成立を認めた。

理由

自作農創設特別措置法第九条によれば、同法第三条の規定による買收は、都道府県知事が、当該農地所有者に対し、買収令書を交付してこれをしなければならない。而して成立に争のない甲第一号証の一、二及び証人室井多門の証言によれば、原告の所有にかかる別紙目録記載の土地に対する被告の昭和二十四年三月二日発行の買収令書は同年五月三十一日野崎村農地委員会書記室井多門が原告宅において、原告の妻に交付したことが認められる。買収令書が名宛人の住所において同居の妻に送達せられたときは、名宛人自身が直接之を受領したと否とを問わず、同法第九条に所謂買収令書の交付があつたものと解すべきが故に、同日同条による買収処分があつたものと認むるを相当とする。而して同法第四十七条の二に依れば同法による行政庁の処分で違法なものの取消又は変更を求める訴は、当事者がその処分のあつたことを知つた日から一箇月内に提起しなければならない。然るに前記室井多門の証言によれば、原告は、同日右買収処分のあつたことを知つていたものと認めることができる。而して本件記録によれば昭和二十四年七月二十一日本訴が提起せられたことが明かであるから本訴は同条に違反し却下すべきものである。然らば、これと同趣旨に出でた原判決は正当であつて、本件控訴はその理由がないから控訴費用につき民事訴訟法第九十五条、第八十九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判長判事 玉井忠一郎 判事 薄根正男 判事 山口嘉夫)

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